「たまたま出会った音楽が、とても心に刺さった」という経験は誰にでもあるだろう。今回おすすめしたい『Music For Large & Small Ensembles』(1990 ECM Records GmbH)も、私にとってのその一つ。カナダのトランペッター・Kenny Wheelerによる、ヨーロッパを代表する名門ジャズレーベル・ECMからのリリース作品だ。
2024年の9月は、数年振りに体調不良が長引いていた。仕事も佳境で、1歳の子どもを連れた帰省も迫り、日々とても気持ちに余裕がない・・という時期の夜に安心を求めて聴いたα-STATION FM京都・青葉市子さんのFLAG RADIOで、冒頭に流れたのが1曲目の「Part 1 – Opening」だった。
聴いた瞬間に、あたたかい救いのような光を感じた。繰り返されるゆったりとした美しいハーモニー。すっと心のざわめきが静まっていき、自分をだんだんと取り戻していくような感覚になった。こういう出会いはとても嬉しい。ありがとうと思った。
私にはお気に入りのラジオ番組がいくつかあって、それはもう内容を楽しみにしているというよりかは、その人の声をただ浴びて安心したいという感覚に近い。そんな心を開ける場所で流れた音楽だからこそ、すっと心に入ってきたんだろうとも思う。とにもかくも幸運な出会い・セレンディピティであったことは間違いない。誰かにとってUcuuuで出会う音楽がそういうものであって欲しいという願いも込めて、書かずにはいられなかった。
アーティスト情報
Kenny Wheeler
カナダ、オンタリオ州トロント生まれの主にイギリスで活躍するジャズ・トランペット、フリューゲルホーン、コルネット奏者。作曲家。
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『Ucuuu』は、穏やかな音楽のある生活風景を紹介するAmbient Lifescape Magazine(アンビエント・ライフスケープ・マガジン)です。
アンビエント、エレクトロニカ、インストゥルメンタル、アコースティックギターやピアノなど、「穏やかな音楽」は日常にBGMのように存在しています。
木漏れ日のように、日常に当たり前のようにありながらも強く認識はせず、でも視線を向けると美しさに心癒されるような「穏やかな音楽」の魅力を多面的に発信しています。
