おすすめの「読書のための音楽」はたくさんあるが、どれか一つあげるなら小瀬村晶さんの「Polaroid Piano」(2009 Akira Kosemura)だ。「ポラロイド写真」をテーマに、ミュート・ピアノとフィールドレコーディングを用いて即興的に録音された作品で、ジャケットの通り柔らかな光のような音楽に心が穏やかになる。
小瀬村晶さんの音楽に出会ったのは大学時代。軽音サークルの先輩からのおすすめで知り、それからアコースティックギターやピアノ、電子音楽などの「穏やかな音楽」を好きになっていった。特に「Tiny Musical」(2008 Schole Records)は何度も家で流していたことを覚えている。
自分にとって読書と言えば、文庫本の小説。最近のお気に入りは瀬尾まいこさん。「そして、バトンは渡された」「夜明けのすべて」「傑作はまだ」、そして先を読み進めたくないほど1ページ1ページ鮮やかに世界が入ってくる「君が夏を走らせる」。ある人から「(本棚には)優しい感じの本が多いですね」と言われたが、確かにドラマチックな展開よりも、日々のちょっとした感情や関係性の変化によって感じる一瞬の小さな幸せを物語に求めているのかもしれない。
晴れた昼下がりにふと時間ができたとき。雨の喫茶店。静かに虫が鳴く夜。さぁ読書しようというときに何か音楽を流したいと思ったら、だいたい穏やかなピアノを流している。それはきっと、物語が持つ優しさの波だったり、ゆっくりと噛み締めながらページをめくりたいというスピード感だったり、そういうものにぴったりなんだろう。
本の世界へ没入するに連れて音楽は聴こえなくなっていくが、ふと現実に戻ってきたときに再び聴こえてくるようになる。音楽が持つ余白が、物語で感じた感動や驚きが響いている心の余韻を、時間をかけて静かに柔らかく受け止めてくれる。そしてきっと、その瞬間をポラロイドのように感覚を記憶し、「この本すごくよかったなぁ」といつまでも思わせてくれるのだ。
アーティスト情報
小瀬村晶
1985年6月6日東京生まれ。在学中の2007年にソロ・アルバム「It’s On Everything」を豪レーベルより発表後、自身のレーベル「Schole Records」を設立。以降、ソロアルバムをコンスタントに発表しながら、映画やテレビドラマ、ゲーム、舞台、CM音楽の分野で活躍。主なスコア作品に、瀬々敬久監督による長編映画「ラーゲリより愛を込めて」、河瀨直美監督による長編映画「朝が来る」(カンヌ国際映画祭公式作品【CANNES 2020】選出)、ハリウッドで制作された海外ドラマ「Love Is__」、石田スイ全面プロデュースによる Nintendo Switch 用ゲームソフト「ジャックジャンヌ」、TBS系テレビドラマ「中学聖日記」、コンテンポラリーバレエ公演「MANON」、ミラノ万博・日本館展示作品などがあり、米Amazon オリジナル映画「ジョナス・ブラザーズ 復活への旅」や、ヴェネチア映画祭・金獅子賞を受賞したフランス人監督オドレイ・ディワンのデビュー作「Mais vous êtes fous(Losing It)」、東宝映画「思い、思われ、ふり、ふられ」でも楽曲が使用されている。
近年は、国際的なブランドとのコラボレーションが多く、是枝裕和監督が手掛けたSK-II STUDIOのドキュメンタリー「The Center Lane(池江璃花子)」の音楽や、アパレルブランド TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. SS22/AW23 コレクション・ランウェイの音楽、LA MER BLUE HEART、LAND ROVER、L’OCCITANE への楽曲提供、米アーティスト Devendra Banhart との共作など、特定の枠に収まらない独自の活動を展開。また、Spotify が発表する「海外で最も再生された日本人アーティスト/楽曲 Top10」に2017年、2018年連続でランクインしたほか、米国メディア「Pitchfork」、豪州新聞紙「THE AGE」、フランス公共放送「FIP」、カナダ公共放送「Ici Musique」にてその才能を賞賛されるなど、国内外から注目される作曲家。2022年より名門デッカ・レコードと契約を結び、EP『Pause (almost equal to) Play』をワールドリリース、ジョン・レジェンドの新作『レジェンド アクトⅠ&Ⅱ』収録の「ジ・アザー・ワンズ feat. ラプソディ」でも自身の楽曲がサンプリング使用されるなど、世界を舞台とした活躍を続けている。2023年6月30日に、待望となるメジャーデビューアルバム『SEASONS』をデッカ・レコードよりワールドリリース。
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PROJECTIONS OF A CORAL CITY
CORAL MORPHOLOGIC & NICK LEON
柔らかい音像の中を、クラゲやサンゴになって流れに身を委ねているような、海の静けさやゆらめきを感じさせる音楽ですね。
Moskitoo
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Tumbling Towards A Wall
Ulla
厭世的なのに人肌も同時に感じて、水の中で空を眺めているような気持ちになります。
aus
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death has light
別野加奈
圧倒的な白い光の中で、生命としての熱や発光を見つめ、受け止めてくれる。
石松豊
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aruk
baobab
自分を取り戻せるような音楽は大切な存在として、長く、ときどき聴くことになっていくのだ。
石松豊
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ABOUT
生活風景に
穏やかな音楽を
『Ucuuu』は、穏やかな音楽のある生活風景を紹介するAmbient Lifescape Magazine(アンビエント・ライフスケープ・マガジン)です。
アンビエント、エレクトロニカ、インストゥルメンタル、アコースティックギターやピアノなど、「穏やかな音楽」は日常にBGMのように存在しています。
木漏れ日のように、日常に当たり前のようにありながらも強く認識はせず、でも視線を向けると美しさに心癒されるような「穏やかな音楽」の魅力を多面的に発信しています。