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COLUMN 2
「読書と静かな即興演奏 vol.1」参加者が選ぶ「読書のための音楽」Yoko Komatsu、Hashimoto Hideyukiなど
2024.10.07

2024年9月27日(金)の夜、東京・池袋にある重要文化財・自由学園明日館にて、音楽イベント「Music For The Story III - 読書と静かな即興演奏 - vol.1」が開催された。参加者はYuka Akatsuのピアノにゆったりと身を任せながら、持参した本を読んだり、会場にある本を読んだりと自由に楽しんでいた。
イベント参加者に「おすすめの読書のための音楽」を募集したところ、多くの音楽が集まった。この記事では、簡単な作品紹介も添えて楽曲を紹介していく。あなたの読書のお供となる音楽に出会えますように。
まずは集まった楽曲から100曲ほどにセレクトさせて頂いたプレイリスト「Reading Books [読書BGM] – Music For The Story III vol.1 -」を紹介。ピアニスト・Yuka Akatsuが出演した回だったことから、ピアノの作品が多く集まった。
以下、いくつかの作品を抜粋して紹介させて頂く。
Yoko Komatsu「あえか」
ピアニスト・Yoko Komatsuが2024年5月にリリースしたアルバム。自然のあわやかな美しさや光の気配を音に表現したような、透明で柔らかいピアノが心地よい作品。CDには楽曲を合わせて楽しめるお香が付属している。
心が落ち着いて静かになりたい時に聴いています。
参加者
美しい音でありつつ、思考する余白があるところが好きです。
参加者
Hashimoto Hideyuki「草稿」
香川在住のピアニスト・Hashimoto Hideyukiによる、アルバム「読書」の制作中にピアノと足踏みオルガンで響きとひらめきをスケッチするように録音した日常の記録を集めた作品。2023年5月には岡山・belkにて「読書のための音楽会」に出演している。
感情の波を静めて、心を静かに安らかにしてくれます。
参加者
yutaka hirasaka「breath」
今回の読書イベントの前身となるオンライン読書BGMライブ「Music For The Story II」に出演頂いたyutaka hirasaka。その際のプレイリストでも一曲目を飾っている。
参加者からは特に作品の指定はなかったが、筆者からのおすすめとして3rdアルバムの「breath」を。ギターを軸としたノスタルジックなメロディには、自分が好きな小説が持っている優しさや懐かしい感情とどこかリンクしているように感じてしまう。
青空の下で風に葉が揺れる瞬間、美しい光と影が交差する昼下がりのアスファルト、オレンジから紺へとグラデーションがかかる夕焼け、蒼く深い夜。多くの作品がリリースされており、作品によってビートやエレキギターなど様々な音色で彼の世界観を楽しめる。ぜひ探求してみて欲しい。
M. Sage「Wants a Diamond Pivot Bright」
アメリカ・シカゴのアンビエント作家・M. Sageの2021年リリース作品。コロナ禍には4人組カルテット・Fuubutsushiを結成し「Yamawarau」「Hotaru」など日本語タイトルの楽曲もリリースしている。
この作品を挙げて頂いた参加者からは、同時に作品をおすすめしてもらったので、以下に紹介する。
・Gia Margaret「Mia Gargaret」
・Emily A. Sprague「Water Memory」
・h hunt「Playing Piano for Dad」
・Alaskan Tapes「Views from Sixteen Stories」
・Bing & Ruth「City Lake」
上に選んだ作品は、こちらに何かを訴えかけてくるというより、音が「ただそこにある」ような印象を受ける音楽で、聴いていると私自身が音に包み込まれ、身を委ねたくなるような感覚になります。
参加者
音楽が流れていると聴き入ってしまうので、読書時に音楽をかけることはあまりありませんが、これらの作品は本を読むときも無理に意識へ入りこまず、身体が在る環境の一部としてそっと寄り添ってくれる気がします。
また空がどんより曇った雨の日などに聴きながら外を歩いていると、自分が居るべきところに居るような、幸福な感覚に包まれることもあります。
その他
以下のような楽曲やアーティストもおすすめとして集まった。
江崎文武「touten No.4」
WONKでも活躍するピアニスト・江﨑文武の自主制作ソロ作品「touten I」からの一曲。
ちょうど9月末くらいの夜の静けさに似合う気がするので選びました。
参加者
上村叶恵「聞こえる風景」
シンガーソングライター・上村叶恵のストリーミング配信されていないインストゥルメンタル・アルバム。
とにかく癒される。どんな季節、時間、気分でも心地よく聴ける。
参加者
orbe「BEAU PAYSAGE」
山梨のワイナリー・BEAU PAYSAGEの葡萄畑で結成した、田辺玄とharuka nakamuraによるユニット・orbeによるシングル曲。
微風が吹くようにギターとピアノの音が流れ、サビに向かい日差しが差し込むような雰囲気で心地いいです。
参加者
haruka nakamura、青葉市子
青森県出身の音楽家・haruka nakamuraと、京都府出身のシンガーソングライター・青葉市子。
詩集や本に合った曲を選んで聴くと、我を忘れてその世界にどんどん入り浸れる。
参加者
羊毛とおはな
千葉はな(~2015)と市川和則によるアコースティックデュオ。
いろんな感情に寄り添ってくれる。
参加者
CINEMA dub MONKS、Suso Saiz
1999年に“物語のある音楽”をテーマに結成されたパフォーマンスグループ・CINEMA dub MONKSと、スペインのポスト・ミニマル/アンビエントのレジェンドで2024年初来日のSuso Saiz。
聴いていないようで聞こえる感じ。本の世界に連れて行ってくれる。
参加者
ANDRE GAGNON
ヒーリング音楽・イージーリスニングの分野で名を馳せたカナダの作曲家・ピアノ奏者。
ピアノメインの静かなインストゥルメンタルは、思考を邪魔せず、ノリノリにならず。資格試験勉強の時は定番の音楽です。
参加者
Yuka Akatsu
出演したYuka Akatsuをおすすめする声もあった。
Masaya Ozaki「Mizukara」
新潟生まれ、ニューヨーク/アイスランド在住の作曲家・Masaya Ozakiによるアルバムにも一票。
執筆・編集:石松豊
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気持ちを落ち着かせたり、自分のソロ活動へと気持ちを切り替えたりするために、この作品をよく聴いています。
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全体的に静かな雰囲気で、余白を十分に感じられる作品です。夜、寝る前に聴くことが多いのですが、そのまま寝てしまうくらい心地よいですね。
Paniyolo
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Andrés Beeuwsaert
ただ暗いだけではなく、遠くに希望のような光が現れたり消えたりしていて、それを追いかけてるようなイメージも湧いてきます。
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Small Winters
Taylor Deupree
横で小川がちょろちょろ流れているような、邪魔はしないけれど、そこにあると安心する音楽ですね。
宮内優里
ABOUT
生活風景に
穏やかな音楽を
『Ucuuu』は、穏やかな音楽のある生活風景を紹介するAmbient Lifescape Magazine(アンビエント・ライフスケープ・マガジン)です。
アンビエント、エレクトロニカ、インストゥルメンタル、アコースティックギターやピアノなど、「穏やかな音楽」は日常にBGMのように存在しています。
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