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COLUMN 5

「読書と静かな即興演奏 vol.4」参加者が選ぶ「読書のための音楽」阿部海太郎、haruka nakamuraなど

2025年2月28日(金)の夜、東京・池袋にある重要文化財・自由学園明日館にて、音楽イベント「Music For The Story III - 読書と静かな即興演奏 - vol.4」が開催された。参加者はYoko Komatsuによる余韻のあるピアノの響きに心を落ち着けながら、持参した本を読んだり、会場にある本を読んだりと自由に楽しんでいた。

イベント参加者に「おすすめの読書のための音楽」を募集したところ、多くの音楽が集まった。この記事では、簡単な作品紹介を添えて楽曲を紹介していく。あなたの読書のお供となる音楽に出会えますように。

まずは集まった楽曲から厳選したプレイリスト「Reading Books [読書BGM] – Music For The Story III vol.4 -」を紹介。今回は8時間116曲と長尺プレイリストになっているので、何日も楽しめるだろう。出演者・Yoko Komatsuを好きな方々からの声ということで、ピアノやクラシック文脈を持つ楽曲が多く集まった。

以下、いくつかの作品を抜粋して紹介する。

阿部海太郎

クラシック音楽をはじめとする伝統的な器楽の様式に着目しつつ、楽器の現代的な表現を追求する音楽家・阿部海太郎さん。自身の作品のみならず、舞台、映画など多岐に渡る音楽制作を手がけている。

今回はアーティストとしてのおすすめとして名前が挙がったので、作品は筆者のセレクトで、5thアルバムの『Cahier de musique 音楽手帖』を紹介する。もともとNHKのテレビ番組のために書き下ろされた楽曲を再構成した作品で、泣きそうになるような気持ちに寄り添ったり、わくわくするような旅の音楽になったりと、時代や場所を超えて、物語の世界を進んでいくときにぴったりな音楽となっている。

気持ちを落ち着けたい時に聴きます。
湖にぷかぷか浮かんでいるような、どこか遠いところに連れていってくれるような、おだやかな気持ちになります。

参加者

阿部海太郎さんの音楽に興味を持った方には、映画『ペンギン・ハイウェイ』のサウンドトラックも素晴らしいので、ぜひ映画ごと鑑賞して欲しい。子どもの目線で描かれるファンタジックな世界を、音楽が優しく包みながら飛び立たせる。きっとその響きは、大人になっても失いたくない、純粋な眼差しを思い出させてくれるだろう。

haruka nakamura『音楽のある風景』

青森県出身の音楽家・haruka nakamuraが2021年にリリースした、”PIANO ENSEMBLE”形態でのライブ演奏を録音したアルバム。『harmonie du soir』や『光』などの名曲が、五人のアンサンブルと聖歌隊CANTUSにより、まるで美しい情景をぎゅっと閉じ込めたような作品に仕上がっている。静かでありつつも、熱気を帯びた輝きを感じられる一枚だ。

また、別の方からは、haruka nakamuraが蔦屋書店のために書き下ろした『青い森』シリーズの中から、『青い森 Ⅱ -蔦屋書店の音楽-』をおすすめする声も届いた。

心を落ち着けてゆったりしたい時に聴いています。

参加者

もしharuka nakamuraを初めて知った方がいたら、ぜひ『arne』のミュージックビデオをぜひ見て欲しい。奥山由之が手がけた映像と相まって、永遠に春を感じるようなノスタルジックな気持ちを心に刻みつけてくれるだろう。

横山起朗『solo piano 01:61』

2020年にリリースされた、横山起朗さんの初期作品を集めたピアノソロアルバム。もともと書き留めていた断片的な旋律から生まれた14曲が収録されている。淡くも深い情感が宿り、静かに心の湖に響いていくようなピアノ作品。

心が静かになるところが好きです。
朝起きて最初に美しい音を聴きたいなと感じた時に聴きます。
心が洗われる感じです。

参加者

『Call Me By Your Name (Original Motion Picture Soundtrack)』

2017年に公開された映画『君の名前で僕を呼んで』のオリジナル・サウンドトラック。本作のために書き下ろされたテーマ曲『Mystery of Love』をはじめ、坂本龍一やバッハの楽曲など、幅広いジャンルの曲音楽がセレクトされている。

少しのさみしさと、清々しさと。
静かな中に滲む感情の機微が心地よく、ここ数年聴き続けています。

参加者

その他

以下のような楽曲やアーティストもおすすめとして集まった。

いろのみ『虹』

「季節のさまざまな色の実を鳴らす」をコンセプトに活動する、柳平淳哉と磯部優によるユニット・いろのみが2015年にリリースした7枚目のアルバム。本作は、日常にあるささやかな光や風のような音を奏でる彼らが、haruka nakamuraやRie Nemotoをはじめとする計10組のアーティストと楽曲ごとにコラボレーションした作品となっている。

Hideyuki Hashimoto『草稿』

「読書と静かな即興演奏 vol.1」参加者が選ぶ「読書のための音楽」でも紹介したアルバム。香川在住のピアニスト・Hashimoto Hideyukiによる、アルバム「読書」の制作中にピアノと足踏みオルガンで響きとひらめきをスケッチするように録音した日常の記録を集めた作品。2023年5月には岡山・belkにて「読書のための音楽会」に出演している。

「音のスケッチ」という名の通り、曲になる前の音の集まり、旋律。
光や匂いが感じられる美しい音色がとても心地よい。

参加者

Yuka Akatsu

「読書と静かな即興演奏 vol.1」に出演したピアニスト・Yuka Akatsu。プレイリストには筆者おすすめの1st アルバム『Botanic』をセレクト。自然の柔らかい揺らぎをイメージさせるこのアルバムは、ほとんどの曲が即興演奏で収録されている。

静かで自由な感じが好きです。ゆっくり寛ぎたい時に聞きます。

参加者

Asami Tono『Station』

ピアノと静かな歌を唄うAsami Tonoによる、2024年リリースのシングル曲。Asami Tonoが「ずっと心の中にあった廃駅を歌にした楽曲」と語っている。

最近夢中になった小説を読んでいるときにずっと聴いていた曲で、今でも聴くと小説の空気感が思い出されます。

参加者

バッハ『ゴルトベルク変奏曲』

バッハが「眠れない夜に、少しでも気を晴らしてくれるような音楽」として書き上げ、チェンバロ奏者であるヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクによって演奏されたとされる楽曲。(逸話には諸説あり)Yoko Komatsuが所属する3人組ユニット・adagioの1stアルバム『adagio』にもカバーとして収録されている。

集中したい時にはとにかくゴルドベルグ変奏曲

参加者

そのほか The Vernon Spring、h huntなど

そのほか、ピアニストのThe Vernon Springやh huntなどおすすめする声もあった。

呼吸がしやすい音楽、あたまが柔らかくなる

参加者

執筆・編集:石松豊

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