Ucuuu

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REPORT 7

都市と自然のあわいを包む、秋夜のアンビエント。Tomotsugu Nakamura×Watasino 『駒沢こもれびBGMライブ』レポート

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2025.12.02

撮影:Yutaka Ishimatsu (Ucuuu)

2025年11月21日(金)の夜、東京・駒沢パーククォーターにて、Ucuuu企画による無料音楽イベント『駒沢こもれびBGMライブ』が開催された。

出演はTomotsugu NakamuraとWatasino。およそ3時間にわたるゆるやかなBGM演奏が、秋の晴れた夜のビオトープ前に、心地よく響き渡った。コーヒーを飲む人、おしゃべりを楽しむ人、犬と通り過ぎる人、静かにくつろぐ人など、それぞれ自由に、穏やかな時間を過ごしていた。

この記事では、当日の様子を写真とともに、参加者・出演者・企画者の感想を交えながらレポートしていく。

白い光の11月、緑を感じる駒沢へ

澄んだ白い光がやわらかく降りそそぐ、11月の昼下がり。晴れた陽射しの中、駒沢は今日も車通りが多く、行き交う人々で賑わっている。

自由通りと246号線が交わる”駒沢らしい”風景

数日前に新しくオープンした「駒沢パーククォーター」にも、そのあたたかい光が届いていた。学生や子ども連れ、犬と散歩中の人など、さまざまな人がベンチで思い思いの時間を過ごしている。

2025年11月11日に開業した商業施設「駒沢パーククォーター」。東急田園都市線・駒沢大学駅から徒歩1分に位置し、駒沢エリアの新たなランドマークとして、地域に開かれた新しいまちづくりの拠点を目指している

駒沢には「駒沢オリンピック公園」があり、都市にいながら自然を感じられる環境が広がっている。駒沢パーククォーターでも、外壁の植栽や2階のビオトープなど、自然の気配を取り入れた余白が随所に設けられている。

準備風景

そのビオトープの前では、少しずつ演奏の準備が進んでいた。リハーサルの音が聞こえ始めると、道ゆく人々が「何か始まるのかな?」と足を止め、興味深そうにのぞき込む。

『駒沢こもれびBGMライブ』フライヤー。駒沢パーククォーターの”公式マスキングテープ”で貼られている。

やがて夕暮れが迫り、空の色がゆっくりと移り変っていく。​​屋上から駒沢の街を見渡すと、「今日の駒沢」の終わりが静かに訪れているのを感じる。さあ、締めくくりの時間として、BGM演奏へと向かおう。

Tomotsugu NakamuraとWatasinoによる『こもれびBGMライブ』

夕方のチャイムとともに、なだらかに演奏が始まった。

アンビエント(Ambient)とヒップホップ由来のビートミュージック(Beat)を融合した新たな音楽ジャンル“Ambeat”を提唱するプロデューサー・Watasino(写真左)。2023年に坂本龍一の追悼アルバム『micro ambient music』に参加し、近年はブックカフェや図書館を舞台に「読書のためのBGM演奏」も行うTomotsugu Nakamura(写真右)

遠くからは首都高速を走る車の音、近くではビオトープから聞こえる水の音。「都市と自然が混ざる音」を背景に、Tomotsugu NakamuraとWatasinoが奏でる居心地のよいアンビエントな音が加わっていく。

ビオトープのある2Fを、3Fから撮影。2F手前には「WOODBERRY COFFEE」があり、音楽を聴きながらコーヒーやケーキを楽しむ人が多く見られた。

その音は2階だけでなく、3階、4階へと静かに広がり、空間全体をやさしく包み込んでいく。仕事帰りの人、食事を終えた人、学生。コーヒーを片手に階段やベンチに座る人、子どもや犬を連れた人、おしゃべりしながら通り過ぎる人など、それぞれ自由に過ごしていた。

ドッグフレンドリーのため、施設内も犬を連れて歩くことができる。1Fの手作り台湾肉包「鹿港」を食べる人も。

Tomotsugu NakamuraとWatasinoは、ときおり会話を交えながら、即興でBGM演奏を続ける。アンビエントサウンドを軸にしつつ、Tomotsugu Nakamuraがギターを弾いたり、Watasinoがビートを加えたりと、ゆるやかな変化が生まれていく。途中では、事前に駒沢公園でフィールドレコーディングされた「スポーツの声援・歓声」も流れた。

Tomotsugu NakamuraとWatasinoは、プライベートでも交流がある2組。ライブとしては、この日が初めてとなるコラボレーション演奏だった。

都会の夜でありながらも、まるで自然の中にいるかのように、ゆったりと過ごせる空気が流れている。穏やかに自分と対話し、誰かと一緒にいながらもほっとできる。そんな時間の中で、音楽はいつしか、まるで最初からそこにあったかのように「駒沢の空気」に調和していた。

都会で暮らす人たちにとって、大自然を感じる旅のような非日常も魅力的だろう。しかし、こうした”都会にいながら自然体になれる時間”も、日々にそっと必要とされる瞬間なのではないか。そんなことに気づかせてくれるのも、BGMライブやアンビエントな音楽だからこそなのかもしれない。

約3時間にわたる演奏は、最後にすっと音量が下がり、静かに幕を閉じた。音が止むとほぼ同時に、近くで犬が鳴き始める。当たり前のように存在していた音楽が消え、またいつもの駒沢の日常に戻っていく。来場者からの拍手と交流を経て、イベントは穏やかに締めくくられた。

参加者の感想

すっきりした秋の夜空と、ビオトープの水の音と、歩く人たちの音と、お二人の演奏がすごくマッチしてて素敵でした。お向かいのマンションの住人の方も、ベランダで演奏を聞きながらお酒でも飲んでいるような感じで、その様子も含めて良い空間でした。あの場所から離れ難かったです。泣く泣く帰りましたが、また聞きたいです。

参加者

音に浸れる時間をありがとうございました!またライブに行きたいです!

参加者

東京で聴くアンビエントミュージックはとても贅沢な気がしました。街の灯りが柔らかく感じるような、都会には無いもしくは足りてない自然の要素がアンビエントにはあるのかもしれません。

参加者

まさに都会のオアシスという雰囲気。めがけて行くライブでありながらも、通りすがりを巻き込む音楽でもあってとてもいい。また春など、あたたかい季節にもライブを聞きたい。

参加者

駒沢での夜の野外ライブ、素敵でした。2人の音楽性がミックスというより掛け合わさって新しいものに昇華した感じで、とても良かったです。

参加者

自然体でいれた時間でした。心が静かになるというか。やっぱりアンビエントっていいですね。

参加者

駒沢じゃなくて海外みたいだった。素敵な時間でした。

参加者

出演者の感想

父親の会社の社宅が桜新町にあったため、子供時代にはよく駒沢公園に連れてきてもらいました。オリンピック公園のシンボルである塔の近くでキャッチボールをしたり、凧揚げをした記憶があります。大人になったいまも都会に出ると、自然とオアシスのような緑の公園に足が向きます。

ライブ当日の演奏については、まさに先述したような「都会のなかで安心できる場所」に自分たちの音楽がなれるように、事前にフィールドレコーディングした音をWatasinoさんにプロセッシングしていただきつつ、阿吽の呼吸で音を足したり引いたりしながら、どこかノスタルジックなフィーリングが自分の中から湧き上がってくるのを、そのまま音にしていました。周囲にある光も柔らかく、ビルに反射する光や、246から聞こえてくる車の喧騒もどこか懐かしく感じられ、安心した心持ちで演奏を楽しむことができました。階段や、上階のテラスから人々が思い思いの姿勢でこちらを見てくれているのも、いつものライブよりも緊張せず、心地良い体験でした。

Tomotsugu Nakamura

駒沢には世田谷区でも屈指の広さを誇る、駒沢公園があります。
都心の大動脈とも呼ばれる国道246号線から、一歩外れた先にある憩いの広場。
会場となった駒沢パーククォーターは、そんな駒沢エリア特有の、都会と自然の融合を実感できる施設です。
首都高の喧騒、ビルとマンション、広い空、水の流れと、そして緑。
一見アンバランスにも見える要素が、それぞれを補い合うように調和する。

演奏本番では、事前に録音した駒沢公園で行われたサッカーや野球の声援を、音素材として再生しました。
熱気のある青年たちの声が演奏と交わり、先に挙げたロケーションも相まって、独特な空間が生まれていたと思います。

何気なく訪れた人々が、椅子や階段に腰掛け休憩している中での演奏。
単なるBGMとしてだけでなく、その場にいる人々の癒やしになれていたんじゃないかな。
街の”とまり木”としての駒沢パーククォーター。その施設の一つの側面を強調する、良い催しでした。
かつて駒沢エリアに住んでいたこともあり、個人的にも感慨深い演奏となりました。

Watasino

企画者の感想

「駒沢パーククォーター」での初めての音楽イベントとして、このBGMライブを実施できたことを、とても光栄に思います。

春にお声がけいただき、駒沢エリアの壮大な計画や、新しい商業施設を中心としたコミュニティへの期待について熱く語っていただきました。それから何度か駒沢へ通い、オリンピック公園でフィールドレコーディングをしたり、コーヒー屋さんやパン屋さんを巡ったりしました。

そうした中で自分が感じた「駒沢の音風景」は、『都市と自然”というコントラストを持ちながら、「声援 / 歓声」という「人をつなぐ音」が、50年以上にわたり「街のBGM」として響き合う街』、というものです。この要素を裏エッセンスとして秘めながら、イベントの準備を進めていきました。

当日は、ライブ前に鹿港の肉まんやWOODBERRY COFFEEのコーヒー・ケーキを楽しみつつ、ライブ中は撮影に伴走し、あっという間に演奏は終了。終わった瞬間に、一気に日常の喧騒が耳に聞こえてきて、「音楽がこの場の空気になっていたんだ」と実感しました。

「こもれび」的な光を感じるには、少し寒くて暗かったかもしれません。でも、音を聴きながらぼんやりできたり、特に喋るわけではないけど誰かと一緒に時間を過ごす安心感を覚えたりと、そういう「こもれび的なあったかい気持ち」が少しでも生まれてたらいいなぁ、と思います。

また、春のあたたかい昼間にBGMライブができたら、より緑を感じられるのかも。機会があれば、ぜひやってみたいです。

石松豊

スタッフクレジット

駒沢こもれびBGMライブ

■出演
Tomotsugu Nakamura、Watasino

■フライヤーデザイン
菅野友美

■受付
コイズミリナ

■主催
駒沢こもれびプロジェクト

■企画
Ucuuu (Yutaka Ishimatsu)

Tomotsugu Nakamuraの機材セット(写真左。他にギターもある)、Watasinoの機材セット(写真右)

プロフィール

Tomotsugu Nakamura

東京都在住のサウンドアーティスト。楽器とフィールドレコーディングを同時にプロセッシングする手法で独自のサウンドを奏でる。電子音とアコースティックのバランスがとれた音像が特徴で、 これまでに laaps(仏)をはじめとする国内外のレーベルから多数の作品をリリース。2023年にはドイツの音楽批評家賞”German Music Critics Award” Electronic & Experimental部門を受賞した坂本龍一の追悼アルバムmicro ambient musicに参加。近年はギャラリーやカフェなどの空間演出を手掛けながら、読書カフェや図書館などにて、読書のための音楽と銘打った静かなライブをおこなっている。

プロフィール

Watasino

沖縄県宮古島出身、東京都在住のサウンドプロデューサー。自身の活動を“人と人・音と音を仲立ちするもの”としている。2020年の活動開始より国内外のレーベルからリリースを重ね、“孤独からの開放”をテーマにした『You are not alone』、『Keep The Window Open』などのアルバムを発表。浮遊感や空間性を特徴とするアンビエント(Ambient)とヒップホップ由来のグルーヴ感のあるビートミュージック(Beat)を融合した新しい音楽ジャンル“Ambeat”を提唱するなど、ジャンルの境界を越えた作品を制作し、都内を中心にSP404(サンプラー)とギターペダルを使った実験的なビートライブも行っている。

執筆・編集・撮影:石松豊

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