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なぜ個人でも活動できる3人がmukmuk recordsを始めたのか。自然体な音楽を、自然体で続けるために

2024.01.05

mukmuk records

2022年に草桶開(yumegiwatone)、UYUNI、morimoto naokiが立ち上げたインディペンデントな音楽レーベル『mukmuk records』。

アンビエント・環境音楽を中心とした「想像力をむくむくと」膨らませる楽曲をリリースしている。最近は11人のアーティストによるレーベル初のコンピレーションアルバムがリリースされたばかりだ。

個人で音楽活動を続けてきた3人は、なぜ新しくレーベルを設立したのか。代表して草桶に話を伺うと、音楽性にも通じる自然体な音楽活動の姿が見えてきた。

3人とも感覚が近いんですよ。音楽やめなさそうというか、やらないと死ぬんじゃないかと

—mukmuk recordsの設立に至った背景を教えてください。

morimoto naoki(以下、モリモト)とUYUNI(以下、ウユニ)とは6年前からライブハウスで知り合っていて。一緒にイベントに出たり、曲を演奏したりと交流があったんです。それで一昨年の年末に3人で一緒に音源出したいね、という話になり、軽い気持ちでレーベルの名前を付けて自主リリースしようとしたのがきっかけですね。

mukmuk recordsの主宰の一人、草桶。フリーランスでプロダクトデザインの仕事に携わりながら、音楽活動をおこなっている。

—最初からレーベル設立を目指していた訳ではなかったんですね。

そうですね。最初のEP『mori ni tokeru』のリリースに合わせて無料の配信ライブを企画したんですが、会場や時間帯などを3人で決めていくのが楽しくて。リリースや企画を今後も一緒にやっていきたいと考えたとき、インディーレーベルとして公に意思表示していこうと思い、SNS上でも発信するようになりました。

配信ライブは森林浴をテーマとし、画面分割で森の木々を映しながら演奏した。

—3人の関係性ができていたからこそ、一緒にプロジェクトを始められたんでしょうか。

音楽への向き合い方や穏やかな人柄を知っていたので、この人たちとなら安心して一緒にやれると思いました。3人とも感覚が近いんですよ。音楽やめなさそうというか、やらないと死ぬんじゃないかと思っていて。やはり音楽から離れてしまった知人も見てきましたからね。

聴き手が自然体で解釈できる音楽を届けたい

—レーベルの中で、3人の役割は決まっているんでしょうか?

明確に決めていないのですが、音楽的世界観のベースを作ってるのがモリモト、イベントや広報企画のアイディアが多くでてくるのがウユニ、そしてデザイン的な見せ方を担当するのが僕ですね。モリモトは曲を一番多くリリースしていますし、アンビエントのスタイルが確立している。”mukmuk recordsらしい音楽”を印象づける重要な存在だと思っていますね。

—mukmuk recordsらしい音のイメージがあると。

レーベルコンセプトの「想像力をむくむくと」には「押し付けがましい音楽にしたくない」という意味もあると思っていて。それぞれの人の解釈でいいというか、聴き手が自然体で解釈できる音楽を届けたいというか

いわゆる環境音楽のように、集中して聴くというよりは、生活の中で何かしているときに自然とそこにある音楽をmukmuk recordsが発信できればいいのかなと。この音のイメージがよく表れていたのが今年のコンピだと思います。

2023年10月にリリースした『mukmuk records compilation vol.1』。レーベルの音楽的世界観を支えるmorimoto naokiが一曲目を飾っている。

—コンピレーションアルバムのように、所属アーティストに限らず楽曲をリリースしていく予定ですか?

僕らがいいと思う音楽は広めたいので、思想に共鳴するようなアーティストがいたらリリースいただけると嬉しいですね。実際に4月にはR.Leavesというベルギー在住アーティストのEPをリリースしました。

2023年4月にリリースしたR.Leavesの『Doubt』。

自分たちに負荷をかけず、無理なく自然に活動する

—個人ではなくレーベルだからこそ、コンピレーションアルバムをリリースできたのでしょうか。

厳密に言うと、個人でもコンピ企画は実現できたと思います。大変だとは思いますが。でも何より3人でリリースの喜びを共有できることが楽しいですね。3人だから到達できた景色というか、魅力を感じていますし。

—次の活動へ向けたモチベーションにもなるんですね。逆にレーベルとしての課題はありますか?

発信力ですね。レーベルの作品やスタンスを、共感してくれる人にどうやって届けていけばいいか悩んでいます。コンピに参加したアーティストが情報拡散してくださったことは、ありがたかったですね。

絵描きの幸山将大とのコラボレーションプロジェクト『(Un)seen dialogues』。noteで楽曲が公開されている。

—なにか大きな広報施策は考えていますか?

いや、大きなエネルギーを使うことは考えていないですね。レーベルの運営ルールとして、自分たちに負荷をかけず、無理なく自然に活動するというのも決めていて。お金をかけなくてもできるアイディアとか、自分たちの生活リズムの中で無理なくできるリリースとか、そういう風に運営していきたいと思っています。

—なるほど。それは音楽を複業的に続けていくためのサステナブルな感覚なのかもしれないですね。

制限があるように見えますが、面白いことは全然できるんですよね。だらだらしている訳でもなく、前向きな自然体で。音楽を辞めない僕らなら焦る必要もないので、今やれることをやっていって、そのうち自然な流れで大きなこともやれたらいいと思いますね。

2023年11月には、作家Halの個展におけるクロージングイベント『Little forest live festival』をmukmuk recordsがサポートした。

アンビエント的な音楽は、聴く人の生活をより豊かにできる

—mukmuk recordsで今後やっていきたいことはありますか。

リリースするだけではなく、コンセプトが伝わるイベントや発信をやっていきたいですね。『(Un)seen dialogues』も1年続いているので、そろそろ展示やZINEなど違う形でも表現したい。アンビエント的な音楽の楽しみ方をもっと伝えていきたいと思っています。

—どんなところにアンビエント的な音楽の魅力があると思いますか?

ポップスのように展開やメロディを楽しむ聴き方とはまた違って、アンビエント的な音楽は、聴く人の生活をより豊かにできると思っています。環境音楽というものは、車の音や足音、木が揺れる音など、聴く人の周囲で自然に流れている音を楽器でより豊かに表現しているものだと解釈していて。

mukmuk records compilation vol.1のジャケットも、アンビエントを意識した風景写真のコラージュになっている。

—生活が豊かになる、というのは例えばどういうイメージでしょうか。

例えば仕事をしながら聴いても、思考は邪魔されない。BGMのように流しているだけで、コーヒーを飲むときにリラックスできたり、本を読むときに集中できたりする。料理で言うと揚げ物ばかりではなくトマトや野菜を添えるみたいな感じで、アンビエントによって生活が少し色づく気がするんですよね。

—アンビエントって、パセリみたいな存在かもしれませんね。そっと彩りや香りを加えるというか。

そうですね。ハンバーグやエビフライじゃなくて、あるとちょっと嬉しいもの。mukmuk recordsとしては、この魅力ある音楽を生活の何気ないところに取り入れてもらうきっかけをつくっていきたいですね。

執筆・編集:石松豊

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