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COLUMN 1

ベルリンでも一般化が進むアンビエントシーン。Midori Hiranoおすすめイベント・アーティスト紹介

2024.01.16

撮影:Moritz Schlieb

テクノ・電子音楽の聖地であるベルリンでも、アンビエントやドローンのイベントが増えているという。

ベルリンに15年住むMidori Hiranoは「アンビエントミュージックに関連するアーティストも多く、またシーンとしてもこの十数年の間で一般化した印象がある」と言う。

来日イベントに伴うインタビューの”こぼれ話”を元に、ベルリンのアンビエント関連における、おすすめイベントとアーティストをコラム記事にまとめた。

ベルリンのアンビエントシーンを楽しめるイベント

Berlin Atonal

1982年に始まった電子音楽の大型イベント。会場は元発電所『Kraftwerk』。約8,000㎡の広さで天井も高く、巨大なコンクリートで覆われている。

建物の特性を活かし、縦長のスクリーンに映像を投影している。

音がよく反響することから、残響も楽しめるアンビエントやドローンのアーティストも多く出演している。

Midori Hiranoは「メロディがほとんどなく、ノイズに近い荘厳な低音が続くドローンのような音楽も人気がありますね。何百人と集まって聴いているんですよ」と語る。

Future Soundscapes Festival

元火葬場のSilent Greenを会場に、映像と音楽のセットを多く見られるイベント。アンビエントのアーティストも多く出演している。

八角形のスペース『Kuppelhalle』でGroupshowがライブをする様子。(撮影:Midori Hirano)

Silent Greenには地下の広い空間や庭など複数のスペースがある。『Kuppelhalle』は音が反射しながら観客席に届くことから、「密度が高く聞こえるのが印象的だった」とMidori Hiranoは振り返る。

Q3 Ambientfest

ベルリンの隣、ポツダムで毎年開催されているフェスイベント。ポスト・クラシカルやアンビエントのアーティストが多く出演している。

ピアノとチェロ、エレクトロニクスを使った兄弟デュオ、Brueder Selke。彼らがQ3 Ambientfestを主催している。

Midori Hiranoもフェス発足当時から参加し、Brueder Selkeと一緒に演奏したこともあると言う。アットホームな雰囲気が魅力だそうだ。

CTM Festival

ベルリンを代表する音楽と視覚芸術のイベント。毎年冬に数日かけて開催される。2023年は約2万5千人の観客が訪れ、36カ国から240名以上が出演した。ジェンダーバランスへの意識も高く、ここ数年は出演者の男女比率がほぼ半々になっている。

1999年から開催されているCTM Festivalのモットーは「Festival for Adventurous Music and Art(冒険的な音楽と芸術のフェスティバル)」。テーマは毎年変わり、2024年は「Sustain」。

ベルリンの今を象徴する会場巡りができることも醍醐味だ。クラブイベントはBerghain、ライブパフォーマンス系のイベントはradialsystem、Morphine Raumなど、大小さまざまな規模の会場を楽しめる。

プログラムも豊富で、電子音楽を中心にダンスミュージック、メディアアート系のインスタレーションやライブ、アンビエントのコンサート、トークイベントやワークショップなど幅広いジャンルに展開されている。

ベルリンを拠点とするアンビエント・アーティスト

Martina Bertoni

ベルリンを拠点に活動するイタリア出身のチェリスト。Midori Hiranoは「チェロと電子音が丁寧に重ねられた、深遠なドローン作品が好きですね」と語る。

Grand River

ベルリンを拠点に活動するオランダ系イタリア人のアーティスト。「ピアノの音と、加工を施した電子音との絡み合いが綺麗です」とMidori Hiranoは薦める。

プロフィール

Midori Hirano

ベルリンを拠点に活動する音楽家。幼少の頃よりピアノを習い始めたのをきっかけに大学ではクラシックピアノを学ぶ。その後は電子音楽にも傾倒した彼女の作品はピアノや弦楽器などのアコースティック楽器の使用をベースにしながらも、フィールドレコーディングや繊細な電子処理による現代的なデジタルサウンドを織り交ぜた実験的なものとなっている。本名名義とは別にさらに電子音のテクスチャーやリズムパターンにフォーカスしたMimiCof名義でも活動中。同名義ではEMS社のヴィンテージシンセSYNTHI100を使用して制作したアルバム「Distant Symphony」をベルリンのKarlrecordsより2022年にリリース。

2006年にnobleから1stアルバム「LushRush」をリリース後、現在までに別名義も含めてSonic Pieces、Dauwレーベルなどから10枚以上のソロアルバムを発表。2021年には波多野敦子との初のコラボレーションアルバム「Water Ladder」をAlien Transistorよりリリース。自身の作品以外にもリミックスも数多く手掛けており、近年ではRival Consoles, Liars, Robot Koch, Pascal Schumacherなどのリミックスを担当。

近年は映画音楽の分野にも活動の幅を広げており、2023年9月にアマゾンプライムから配信されたサッカードイツ代表に密着したドキュメンタリーシリーズ「All or Nothing - The German National Team in Qatar」の全4エピソードのスコアを手掛けている。

執筆・編集:石松豊

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