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PROJECT 3
日本のLoFiシーンはもっと輝く。Japanolofi Records代表ThirstyGirlが無名アーティストを支える理由
2024.01.05
2022年に立ち上げられた『Japanolofi Records』。1年で200曲以上リリースしたり、Vライバーとコラボした企画を実施したりと勢いを感じる音楽レーベルだ。SNSでも多くのLoFiアーティストが話題に挙げている。
なぜ日本では珍しいLoFiジャンルに特化したレーベルを立ち上げたのか。背景をアーティストでもあり代表のThisty Girlに伺うと、日本の音楽シーンの課題やLoFiの魅力、そしてレーベル活動の根底にある「編集視点」が見えてきた。
日本はLoFiみたいなインストを聴いてもらえる環境なんか整ってないんですよ
—Japanolofi Recordsは、いつから始まったんですか?
最初のリリースは2022年10月です。準備は前年から進めていました。
—どのような経緯だったんでしょうか。
もともと歌モノのバンドでギターを弾いていたんですが、コロナで活動の場がなくなって。どうしようか悩んでいたときに、偶然Spotifyでコウヘイさん(=KOHEI YOSHII)の曲に出会ったのが、LoFiを知るきっかけでした。
「こんな曲を作りたい!」と思ってコウヘイさんにDMを送り、ビートメイクの基本を教わりました。そしてThirsty GirlとしてLoFi楽曲を作って、アメリカのレーベル『Tsunami Sounds』からもリリースさせていただきました。
LoFiシーンで活動していくうちに、日本にLoFi系のレーベルがないことに気づいたんです。自分は運よくコウヘイさんの力を借りてリリースできたけど、もっと多くの日本人アーティストが世界に出ていけると思って。そうしてコウヘイさんをはじめとする同志と、Tsunami Soundsのオーナー・Damon Broussardの協力を得ながら始まったのがJapanolofi Recordsですね。
—日本にはLoFiの土壌がまだできていないのでしょうか。
そうですね。国内で経済が回るので、世界に羽ばたく環境が整備されていないと感じています。大衆に受け入れられるジャンルもJ-POPやロックという歌モノに固定化されてますし、日本はLoFiみたいなインストを聴いてもらえる環境なんか整ってないんですよ。だからこそ、日本にLoFiの魅力を広めたいという使命感を感じていました。
—LoFiの魅力は何でしょうか?
「暮らしと調和している音楽」でしょうか。歌詞やサビを身構えて聴く音楽ではないんです。家事や勉強をしながらプレイリストを流していいというか。あとはLoFiといってもジャズホップやブームバップなど更に細分化されるので、好みのスタイルが見つかりやすいという魅力もありますね。
無名なアーティストでも、きっかけがあれば一気に輝くことができる
—自身の制作活動のみならず、レーベルを立ち上げて日本のLoFiアーティストを支援したいと思ったのは、なにか気質というか過去の経験が繋がっているんでしょうか?
いい楽曲をつくるアーティストはたくさんいますし、周りと競うよりもプロデュースする方が自分には向いてると感じていました。というのも、僕の本職はWEB系の編集者でして。有望なライターを探して、一人前に育てるのが仕事です。アーティストをサポートして世に送り出すレーベルオーナーの仕事は、本職に通じる部分があります。
—編集は「人の魅力を輝かせる」という考え方にも繋がりそうですね。
情報の見せ方って大事だと思うんです。いい楽曲を作っていてもSNSで発信していないなど、個性を打ち出せていない人が多くて。LoFiはプレイリストで聴かれるシーンなので、ちゃんと魅力を伝えないとファンがつかないんです
逆に言えば無名なアーティストでも、きっかけがあれば一気に輝くことができる。そこをプロデュースしたいというか、レーベルとしてサポートしたいという想いがありますね。
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🎧𝙼𝚄𝚂𝙸𝙲 : Wander Wah Day / Zanei ,PrettyYummyhttps://t.co/rsX52WDVCF同じものを、いくつももつのは豊かなこと。
色違いならなおさら、意味がある☕どれで飲もうか。 pic.twitter.com/O9L3rN82Ey
— BOOTH コーヒーとチルな音楽 (@booth_lofi_cafe) November 5, 2023
血の通った運営がしたい。人と人なんだから
—立ち上げから1年で150近いアーティスト・200曲以上のリリースと、実際に数多くのきっかけを提供できていますね。
ここまでの予定はなかったんですが、リリース希望曲を募集すると毎回100曲とか集まっちゃって。審査の上でリリースに至っていない楽曲も多くあります。でも断るか悩んでるときに「出してあげたら喜ぶだろうな」と思ってしまうこともあって。結果的に増えていきましたね。
—応募数も多くて驚きですが、できるだけ応えてあげたいという情を感じます。
僕がTsunami Soundsから曲を出したとき、オーナーのDamon Broussardに優しくしてもらったんですよ。それがとても嬉しくて。だから同じような心境になってしまいますね。なんとか輝かせたいというか。
だからミックスや展開への具体的なフィードバックもできるときにやっています。「あと少しよくなったらリリースできる!」と感じる人がいっぱいいて。
—フィードバックにも、良さを引き出す編集視点がありそうですね。最終的にリリースできるかの基準は、どうやって決めていますか?
世界のLoFiシーンに出ていっても恥ずかしくないかですね。例えば日本人はミックス面が弱くて。海外との差は住環境の違い、要は家でスピーカーから音を大きく出せるかかなと。でも楽曲をリリースするということは、強い海外曲とも戦わなきゃいけない。だからフィードバックして高めていく必要があると思っています。
あと、よくコウヘイさんが「血の通った運営がしたい。人と人なんだから」と言うんです。海外では、メールの返信がなかったり、提出したデモを一度も再生しなかったりするレーベルが少なくありません。そのドライな対応に嫌気が差す人、日和(ひよ)ってしまう新人アーティストも多くて。
うちは知名度や実績を問わず、「海外で戦える」と思った楽曲は積極的にリリースしています。大手のように自力で再生数を稼ぐことはできませんが、どこよりもアーティストを大事にするLoFiレーベルだと自負しています。
—Japanolofi Recordsはビジネス的な側面を持ちつつも、長い目線でアーティスト活動を支える存在になっていますね。
この1年は採算度外視でしたね。日本のLoFiシーンを盛り上げる。この信念だけでとにかくやってきたという感じです。
僕の性格的に、フィードバックのときも「よくならないからリリースできません」とは言えないんですよね(笑)。なので何度も繰り返して完成に近づけていく。そうやって楽曲制作の基本を学び、リリース経験を積んでもらって、その後は規模の大きいレーベルからリリースしていって欲しいと思っていますね。
—LoFIアーティストの養成所みたいです。
実際なってますね。レーベルとしてはどうなんだろうと思う一方で、コミュニティとしてはかなりいいです。初心者が世界に羽ばたいていける環境が少しずつ形になってきていると思いますね。
誰もやらないようなことをやると、自然と話題になるんですよね
—どうすれば日本でもっとLoFiを聴く習慣ができると思いますか?
分からないから色々がむしゃらに試してますね。アフターコロナで家にいる時間が減り、LoFiのトレンドも落ち着いてしまったので、より積極的な発信が必要と思っています。最近だと、Vライバーとコラボした楽曲募集キャンペーンを行いました。
あと、2024年1月からUrbnocturne(アーヴノクターン)というサブレーベルが始動します。LoFiの中でもボーカル入り楽曲をリリースすることで、日本人がLoFi音楽に興味を持つきっかけになれたらと思っています。
—多くの人が興味を持つ入口から、LoFiを好きになってもらう狙いなんですね。
普通にリリースするだけではジャンルの知名度は広まらない。でも誰もやらないようなことをやると、自然と話題になるんですよね。Xでも色んな人が投稿してくれたり、新しいコラボ希望の問い合わせが来たり。
—日々のリリースやフィードバックだけでも大変だと思いますが、攻めた広報施策も複数されていて、確実に日本のLoFiシーンの成長に繋がっていそうです。すごくやりがいがありそうですね。
もちろんありますね。例えば1年前まで全く無名だった人から「有名なレーベルからリリースすることが決まった!」と連絡をもらったときは、すごく嬉しかったです。多くの人が聴き流しているBGMにも、命を注いでいるアーティストがいるんですよ。もっとLoFiの魅力を伝えていきたいです。
プロフィール
ThirstyGirl
Composer /Japanolofi Records Foundclaer
執筆・編集:石松豊
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阿久津隆
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『Ucuuu』は、穏やかな音楽のある生活風景を紹介するAmbient Lifescape Magazine(アンビエント・ライフスケープ・マガジン)です。
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木漏れ日のように、日常に当たり前のようにありながらも強く認識はせず、でも視線を向けると美しさに心癒されるような「穏やかな音楽」の魅力を多面的に発信しています。