音楽的ではない現代音楽で一番辺境というか、かろうじてアンビエントではないと感じるJim O’Rourke『Disengage』(1992 staalplaat)をおすすめします。
全曲10分以上の尺があり、音量も小さすぎたり大きすぎたりと、聞きやすくはないんです。気分で聴く音楽ではなく、「この音楽を聴きたいから聴く」という作品。なんだけど、アンビエント感もあるんですよ。
「ここまでがアンビエント!」という定義もないし、こういう微妙なラインの作品が思想や生き方の拡大に繋がるんじゃないかなと思っています。
我々が使ってる音楽のルールや楽器も、いわば西洋が作ったものなんですよね。実は世界を支配する方法論の一つに飲み込まれているんだけど、特に支配されている感じはしないし、打破する方法もあまり持ってないから、結局ドレミファの音楽を作ってしまう。この作品は、そこから外れることができるのもいいですね。
アーティスト情報
Jim O'Rourke
アメリカ「ポスト・ロック」シーンの牽引者。1969年シカゴ生まれ。10代後半にデレク・ベイリーと出会い、ギターの即興演奏を本格的に始める。その後、実験的要素の強い自身の作品を発表。ジョン・フェイフィの作品をプロデュースする一方でガスター・デル・ソルやルース・ファーなど地元シカゴのバンドやプロジェクトに積極的に参加。「シカゴ音響系」と呼ばれるカテゴリーを確立する。一方で、マース・カニンハム舞踏団の音楽を担当するなど、現代音楽とポスト・ロックの橋渡し的な存在となる。99年にはフォークやミニマル音楽などをミックスしたソロ・アルバム『ユリイカ』 を発表。インディーズからのリリースだが、日本でも数万枚を記録。近年ではソニック・ユースのメンバー兼音楽監督としても活動し、数枚のアル バムに参加、より広範な支持を得る。(2005年末に脱退) 2004年には、"Wilco/A ghost is born"のプロデューサーとして、グラミー賞を受賞。本国でも現代アメリカ音楽シーンを代表するクリエーターとして、高く評価されている。ヨーロッパでも数々のアーティストをプロデュースしている。日本文化への造詣も深く、「くるり」のプロデュースを始めとして、坂田明、ボアダムスとのコラボレーションや、映画監督、若松考二の過去作品の評論など様々な活動を行っている。
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